2020年08月8日
本日、1学期終業式を行いました。終業式での校長あいさつをアップいた
します。
みなさん、おはようございます。
長かったようで短かった1学期が今日で終了します。大阪青凌の校地が移
転して初めての年。
みなさんにとって、この1学期は新しいことだらけだったと思います。初め
ての通学路、初めての教室、初めての授業。挙げると切りがありません。
そして何よりも新型コロナウィルス感染予防のために、これほど長い間、
学校が休校に追い込まれたのも初めてでした。3月から突然、外出もままな
らない日々が続きましたが、皆さんはどんな日常を送っていたのでしょうか。
ちょっと休校中の3カ月を、頭の中で振り返ってみてください。
料理のレパートリーが増えた人がいるかも知れません。受験勉強に不安を
感じた人がいるかも知れません。映画やドラマを飽きるほど見た人がいるか
も知れません。本をたくさん読んだ人もいるでしょうね。学校から出される
課題の提出に四苦八苦したという声も聞きました。いろんな家での過ごし方
があったと思いますが、一番多く私の耳に入ってきたのは、「早く学校に行
きたい」という皆さんの切実な声でした。
休校前は、当たり前のことだった「学校に行く」ということが、「友達に
会う」ということが、「クラブ活動をする」ということが、こんなにも自分
にとってかけがえのないことだったと知らてくれたのが、この休校期間だっ
たかも知れません。そう考えると、この休校期間を通して、皆さんは少なか
らず「自分にとって学校ってどんな意味をもっているのか」を考えるきっか
けをもったとも言えるのではないでしょうか。
さて、ここ最近は連日、各都道府県での新規感染者の数が報道され不安な
日々が続いています。しかしこの感染急増の中、心温まる話もいくつかあり
ます。今日はそんな話をしたいと思います。
皆さんは「3月のライオン」という漫画を知っているでしょうか?
これは、中学生で将棋のプロ棋士になり、まわりの人たちとの交流を通し
て、成長していく少年の姿を描いた漫画で、アニメや映画にもなりました。
作者は羽海野チカさんです。
彼女は、20年以上も前に、ある医学部の大学生が投稿している「ブルー
タス、おまえモカ」というタイトルのブログを愛読していたそうです。とこ
ろが、医学部での勉強が忙しくなったのか、ブログの更新は、ある日を境に
ぷっつりと途絶えてしまいます。
彼はどうしているのだろう。羽海野さんは、それからも時折、当時の彼の
ペンネーム「くつ王」で検索をしていたのですが、ようやくこの人ではない
かという人を発見します。彼は、このコロナウィルス感染が拡大する中、そ
の最前線である国立国際医療センターで医師として働いていました。
羽海野さんは、彼が立派になったことを喜ぶとともに、何とか彼の役に立
てるものを贈りたいと考えるのですが、未知のウィルスと戦う現場で、知ら
ない人からいきなり届いても助かるものって何なのか、なかなか思いつかな
い。その思いを正直にツィートします。このツィートは多くの人にリツィー
トされ、結果、翌日、なんとペンネーム「くつ王」こと忽那医師から、「も
し羽海野さんが探している人が私なら、めちゃ嬉しいです。私も「3月のラ
イオン」を生きる糧にしています」とのコメントが返ってきたのです。
忽那医師は、偶然にも羽海野チカさんの大ファンで、羽海野さんが自分を
探していると知ってとても驚いたそうです。そして何度かやりとりを重ねる
中で、忽那医師は、羽海野さんに、「3月のライオン」に登場する3人の姉
妹をキャラクターにして、子どもたちに手洗いを推奨するイラストの作成を
依頼することになります。
羽海野さんは、依頼をうけたその日にイラストを描き上げ、その後忽那医
師や、2人のネット上でのやりとりをみていたフォロワーたちからのアドバ
イスもとりいれ、イラストを完成させます。それがこのイラストです。
2人の思いがこもったこのイラストは、営利目的でなければ誰でも使
えるように公開されていて、大勢のフォロワーたちによってその後、英
語、フランス語、ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語、ロシア
語、中国語等に翻訳され、世界中に広まることになりました。忽那医師
は、今も、ウィルスとの闘いの最前線に立って活躍されています。
さて明日から史上最も短い夏休みが始まります。高校3年生は、今月
18日には始業式がありますから、わずか10日の夏休み。その他の学
年および中学生は約2週間の夏休みです。
残念ながらウィルスの感染拡大は続いています。しかも大阪は、10万
人あたりの感染者数が約15人と日本の中でもとても多い都道府県にな
っています。先に紹介した忽那医師は、「手をよく洗う、外では顔をさ
わらない、部屋の換気をこまめにする」この3つが感染防止にとても重
要と言っておられます。
ただどれほど注意していても、私を含め誰もが感染する可能性があり
ます。体調が悪かったり熱がある時は、無理をせず、また感染が判明し
た時は、学校に連絡するようにしてください。万一、感染者が出てもあ
わてず騒がず、周りの人は感染した人を非難するのではなく、その人を
思いやり、むしろいたわりの言葉をかけるように心がけてください。感
染を口に出せないような雰囲気を私たちがつくってしまえば、感染は一
部でとどまることなく、静かに広範囲に広まっていくのです。そのこと
をよく考えてください。先に紹介した2人のように、お互いが思いやり
尊敬しあえる人間関係が、一つの理想型だと思います。
それでは、これで2020年度1学期終業式にあたっての私の挨拶を終わり
ます。ありがとうございました。
福力