2021年07月29日
「相模原論文」なるものをご存じでしょうか?A4用紙でわずか5枚程度の論文
なのですが、昨年、日本感染症学会に寄稿され、医療関係者のみならず多くの人
に衝撃を与えた論文として知られているようです。私も最近、ある小説を通じて
始めて知りました。論文の正式なタイトルは、「市中病院で経験した、人工呼吸
器装着が必要であった重症COVID-19肺炎の感染対策、治療について」となってい
ます。
この論文は、日本で初めてコロナウィルス感染症の死者を出した相模原中央病院
の医師たちが書いたもので、当時は疾患そのものの正体が全くわからず、治療方
法も知られていないなか、専門外の脳神経系外科の医師たちが試行錯誤で治療に
あたった様子とその症例が記されています。
なぜ専門家のいない病院が、治療の最前線に立っていたのでしょうか。その理由
として、他病院(感染症および呼吸器系内科などの専門病院)に対して再三応援
を依頼したものの、コロナウィルスの感染を恐れて、転院はおろか非常勤医師の
派遣すら拒否されたことが、この論文に記されています。
さらに病院名が報道された直後、院内感染が発症、病院は一挙にその機能を喪失
する状態に追い込まれます。その状態から感染者を隔離し、肺炎を発症した患者
をいかにして救命したかの症例も2例、あわせてこの論文には記載されています。
大量のワクチン接種が始まった今、当時の五里霧中の状況は改善されつつありま
すが、新規感染者がこれまでにないペースで急増する今、医療体制は一枚岩で対
処できているのでしょうか。この論文が発表された1年前のように、一部にその
負担が偏ってはいないのでしょうか。あらためて逼迫する医療体制が危惧されます。
※https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200312_4.pdf
福力