2017年12月20日
秋に出会った良書の1つです。ゴッホの絵は昔から好きで、いろんな美術館で彼の絵
を鑑賞し、その筆のタッチ(ゴッホの絵は、特に筆のタッチがはっきりと残っている)に、
まるで彼がさっきこの絵を完成させたばかりかのようなリアルさを感じ、ゴッホについては
そこそこ知っているつもりだったのですが、彼自身の人生については、ほとんど知らなかっ
たことが、この本を読んでわかりました。
特に日本美術、なかでも浮世絵がこれほど彼の心をとらえ、その画風に影響を与えていた
ことは驚きでした。そしてその日本美術との出会いに、林忠正なる日本人が重要な役割を果
たしていたこと、ゴッホが「日本」を求めて南仏アルルに移住したなどなど、始めて知るこ
とが、他にもたくさんありました。(この小説が事実をもとにして書いてあるという前提で
ですが)
弟テオとの愛憎、経済的困窮、ゴーギャンとの確執、ゴッホの人生は、決して恵まれたも
のとは言えませんが、日本美術と出会い、これだけの作品を残し、それが死後とはいえ高く
世の中に評価され、今や世界中の名だたる美術館に収蔵されていることを考えると、画家と
しては、幸せと言えるのではないでしょうか。
著者原田マハさんは、美術関係の小説をこれまで何作も書いてこられましたが、個人的に
はこの作品がベスト1だと思います。この冬休みに読む本としておすすめの1冊です。
福力