受験生とゲストのみなさまへ

2018年01月26日

生徒から見た「大学入学共通テスト」

実施まであと3年と迫った「大学入学共通テスト」。昨年、11月に実施された試行のテストを
受けた高校生はどう思ったのか。今週月曜日(1/22付朝刊)の朝日新聞に、静岡県立掛川西
高校2年生の生徒たちの感想が掲載されていました。
その感想は一様に「難易度が増している」というもので、特にこれまでのセンター試験との
質的な差異を感じた生徒が多いようでした。彼らの感想を少しまとめますと、

 

・素材文が長く、かつまた表やグラフの資料も多い。
・センター試験に比べて、生育環境による有利不利が生じそう。
・登場人物の心情を聞くような問題よりも、情報を取捨選択して適したものを導き出す力が
 問われる。
・新テストの方が、今の社会で求められている力を問うている。
・求められるものが、暗記力から表現力に変わった。
・人に伝える経験、自ら情報を発信する機会を持つことが求められる。

冷静かつ客観的な高校生の問題分析に驚かされます。彼らの感想は、このテストを初めて受ける
予定の現在の中学3年生に大いに参考になることでしょう。

少し話題がずれるのですが、これらの感想に関連して私が思い起こしたのは、昨年9月に発表さ
れた国立情報学研究所の新井紀子教授の調査研究結果です。調査では、21,000人の中学生・高校
生を対象に独自の読解力テストが実施されたのですが、特に中学生の約25%が、教科書レベルの
基礎的な読解力が不足していると指摘されていました。
新井教授が「読解力が低く教科書が読めないと、自力で新しい知識を得ることができない。運転
免許など資格も取得できず、社会生活に支障が生じる」と危機感をあらわにしておられるのが、
私には衝撃的でした。登場人物の心情を読み解くことも大事だけれども、文章やグラフを正確に
読み解く、そしてそれを自分の言葉で表現することが重視される、試行テストでも、このことに
焦点があてられているのではないかと感じました。
記述式問題の導入というキーワードだけが、一人歩きしている感のある「大学入学共通テスト」で
すが、今回の試行テストを通じて、問題の焦点がどこに絞られているのかが、少しずつわかってき
たように思います。
福力

※参考までに国立情報学研究所で実施された読解力テストの問題例を1つ挙げておきます。
問題 以下の文を読みなさい。
 「トポロジーの誕生は、18世紀にさかのぼる。」

上記の文が表す内容と以下の文が表す内容は同じか。「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。

 「トポロジーの誕生は、18世紀以前である。」     (2017.1.15読売新聞朝刊より)