受験生とゲストのみなさまへ

2019年05月7日

大学入試改革3

前回、池上さんと佐藤さんが、大学入学共通プレテストの内容を高評価されていることを、
またプレテストの結果が悪いのは、現在の教育が新しい改革に追いついていないからとま
で評されていることもご紹介しました。
これとほぼ同じ意見を持っておられるのが、中央教育審議会前会長の安西祐一郎氏です。

「文部科学省や大学入試センターは、入試として適切な問題を出そうとしていると思う。た
 だ、正答率が低いのであれば、それは問題が不適切だからではなく教育改革が進んでいな
 いからだ。試行調査の正答率が低すぎたからといって、問題量を減らして易しくするのは
 本末転倒ではないか。私は、受験生のほとんどが0点であっても問題を変えず、解けるよう
 になるよう、授業を変えることを目指すべきだと思う。」
                     (変わる大学入試2020 朝日新聞2019.4.5)

安西氏は、東京大学の英語民間試験への消極的な態度も、激しく批判しています。少し長くな
りますが、その批判を以下にご紹介します。

「世界に通用しないローカル大学としての東大を表現する最高(あるいは最低)のものが、現
在の東大入試、特に英語科目なのだ。 その意味で、五神学長に提出された答申は、わが国の未
来を創り出す責任を背負った東大の今後あるべき姿とかけ離れた、見識を疑う内容の答申と言
わざるを得ない。一読して、答申を書いた人たちは英語ができないに違いないと思った。」

「東大は、明治以来、わが国を牽引してきた大学として、入学者選抜の方法(特に英語)を時
代遅れの国内ローカルではない、世界に通用する方法に改めなければならない。その絶好の機
会が巡ってきているのに、答申はこの点をまったく理解していない。国民にとって本当に必要
な東京大学は、時代の変化を乗り越えてこれからの日本を創り出すリーダーとしての東京大学
であって、現在の東大入試、特に英語の入試は、それにまったく逆行した、昔の日本のための
入試だ。」

「もし答申が通って英語入試が矮小化されるのなら、東大は時代の牽引者として国民が負託す
べき大学に値しない。そうであれば東大に多額の税金を注入する必要はない。」
                      (読売教育ネットワーク 異見交論 vol.55)

記述式の共通テストは評価されるべき内容で、たとえ受験生の正答率が1割に満たなくとも強行
すべきなのか、いやそのような問題は不適切だととらえるべきなのか。そもそも高大接続改革、
なかでも特に大学入学共通テストが、ここまで迷走を続けるのは何故なのか。次回は私の意見を
少し述べてみたいと思います。
福力