2019年05月17日
いろんな本を読んでいて、数年に一度くらいの割合で思わず「あっ」と声を出してしまう
本に出会います。佐藤優さんの新刊本『友情について』が、まさにその本でした。
本の表紙にあるように、これは佐藤さんの高校時代の親友、豊島昭彦さんがステージ4の
膵臓がんになっていることを知り、彼の半生を自分の半生と重ねながら綴った本です。
読み始めてすぐその予感はあったのですが、19ページに入ったところで、思わず「あっ」
と声をあげてしまいました。
なぜかというと、春休みに滋賀県北部の須賀谷温泉のホテルに宿泊した際、この豊島昭彦
さんが書いた『湖北残照 戦国武将と浅井姉妹』という本をロビーで見つけて購入し、読ん
で知っていたからなのです。どこか記憶の片隅に「豊島昭彦」という名前があったのかも
知れません。はからずも豊島昭彦さんのその後の人生に出会った気がして、思わず声を出し
てしまいました。
佐藤さんから「君の半生を本にしよう」と提案された時、当初豊島さんは、「僕はたいした
人生を送っていない。大学を卒業して一般企業に入社し、結婚して子どもが2人できて、2
度の転職をしたけれどごく普通のサラリーマン生活を送ってきたに過ぎない。」と固辞しま
す。しかし、佐藤さんはその豊島さんの人生の中に普遍性を見いだし、すぐれたドキュメン
タリーに仕上げています。
豊島さんは一橋大学を卒業して、日本債権信用銀行に就職しています。いわゆるエリートコ
ースです。ところが、バブル崩壊の中、日債銀は破綻、やがてゆうちょ銀行への転職を余儀
なくされます。しかしそこでも苦悩が待っていました。
同じ時代を生きてきた者として、リアルにあの頃の時代の雰囲気が蘇ってきた感じがしまし
た。しかし、友情というのは、40年近いブランクがあっても朽ちないものなのですねぇ。
本書を読んで、そのことに一番感銘を受けました。
福力