校長ブログ

2017年05月23日

『夜の谷を行く』

  

 

小学生の時、担任の先生が教室にあったテレビをつけ、特別に授業中に見せてくれた
思い出があります。各教室に備え付けられていたテレビは、あまり使用されることは
なく、決まった教育番組のみを視聴することが常だったので、民放のニュース特別番
組を見られる、その事だけでクラスの生徒みんなが興奮していました。
その映像は、今も脳裏に焼き付いているのですが、大きな鉄球が繰り返し建物にぶつ
けられているシーンでした。小学生だったので、まだ事の顛末、何が起こっているの
か、その時は理解できなかったのですが、その特別放送が、連合赤軍の「あさま山荘
事件」を伝えるものだったのです。

あれから約40年が経ちました。生き残った人々はどんな風にあの過去を振り返ってい
るのか、どんな人生を生きているのか。それをストーリーにした小説が『夜の谷を行
く』です。書店で興味をもって少し立ち読み始めたのですが、ページを繰る手がとま
らず、購入して一気に読み終わりました。個人的に今年上半期のベスト1です。
小説なのでストーリーはフィクションだと思うのですが、ところどころ事実が差し挟
まれていて、リアルさはノンフィクション以上でした。桐野夏生さんは、これまで読
まず嫌いのところがあったのですが、これを機に彼女の他の作品に俄然興味が湧いて
きました。
※この本、図書室に寄贈しておきます。
福力