校長ブログ

2018年09月22日

日航機123便③

2冊目は、『日航機123便墜落 最後の証言』。この本はかなり売れているようで、ど
この本屋さんに行っても、在庫切れでした。仕方なく、電子図書で購入。こういう時
に、kindleは便利ですね。
さてこの本の著者、堀越豊裕氏は、共同通信社外信部次長。そのネットワークを生か
して、米国で特にNTSB(米運輸安全委員会)、ボーイング社の関係者から事故当時
の詳しい事情を取材しています。そこで明らかになったのは、米国と日本との事故責
任のとらえ方の違いです。簡単に言うと、日本では「責任者は誰かを明らかにして、
その人物に罰則を与える」が至上命題になるのに対し、米国では悪意がなければ、事
情聴取する関係者に最初に刑事上の免責を与えて、事故原因を追求することに重きを
置くというのです。
ご存じのように、123便の墜落の公式原因とされたのは、ボーイング社の圧力隔壁の
修理ミスでした。その修理ミスには悪意があったのか、ないならば免責を与えた上で
どのようなミスで、それがどう墜落につながったのかを調べる、というのが米国流の
ようです。しかし著者も本書で述べているように、このような考えは、日本ではなか
なか理解されないでしょうね。日本の警察、事故調は、ボーイング社で修理にあたっ
た関係者の事情聴取を何度も試みたものの拒否されたということ、またその関係者は
事故後、長らくの間、外国に行く際にも日本を経由することは慎重に避けていたとい
うことは、本書で初めて知りました。
著者は、先の本の青山氏にも会い、ミサイル説にも本書の中で言及しています。しか
し、米国の関係者も最初は「テロ説」が有力で事故現場に入ったが、機体の破片にそ
の痕跡がなかったということ、もしミサイルが発射されたなら、それはレーダーで捕
捉されたはずということ、またミサイルを発射した艦船には数千人が乗りくんでいる
はずで、それら全員の口を30数年にわたったつぐませることはできないはず、として
ミサイル説を明確に否定しています。

ご紹介した2冊の本、その取材の結論は全く違います。あれほどの事故で、30数年経
った今も、さまざまな説があること自体、驚きを隠せません。航空機というのは、そ
れに搭乗すること自体、日本ではもはや日常の風景となっていますが、それだけ複雑
で、多くの犠牲者のもと、その安全性が向上してきたということなのかも知れません。
※前回で紹介した『遺物は真相を語る』は図書室に寄贈しています。
福力