2018年08月5日
今日の読売新聞1面で、東京大学の北岡教授が、東大法学部の凋落に警鐘を鳴らしてい
ます。この内容がなかなか具体的でかつ興味深かったので、少しご紹介したいと思います。
まず北岡教授は、「法学部凋落」の顕現を、いわゆる「進振り」の異変から説明します。
東大は、入試段階で学部名ではなく、文科1・2・3類、理科1・2・3類という枠で募
集をしています。そしてそのうちで文科1類の学生は、2年に進級する際、だいたいが法
学部に進むということになっています。北岡教授によれば、他の2・3類から法学部に進
む枠もあるが、「極めて狭き門で、その科類でトップクラスでなければ進学できなかった」
そうです。これがいわゆる「進振り」です。
だからこそというべきか、大概の受験雑誌の大学学部別ランキング表の文系最難関は、東大
文科1類になっているのです。
ところが、ここ5年、この他の科類から法学部への枠が埋まらず、かつまた文科1類から、
法学部に進学しない学生さえ増えてきているというのです。
何故なのか?その原因を北岡教授は、以下のように分析しています。
①公務員制度の危機
公務員は激務。特に中央官庁の仕事は、「働き方改革」のかけ声とは裏腹に、深夜勤務が当
たり前のような状態が、今も続いています。その激務に比して、給与は低いままです。北岡教
授曰く、「役人トップの次官でも、大企業トップの10分の1程度、好調な民間企業の課長程
度」とのこと。さらにいわゆる天下りについても、最近では制限もあり、難しい。その上、年
金は大企業に比べるとかなり少ない。
それに関連して、AERA7/23号での記事「総合商社の研究」に掲載された、東大京大生の志
望企業ランキング(18p)によると、第1位がマッキンゼー&カンパニー、2位がゴールドマン
・サックス、3位がボストンコンサルティンググループ、4位がグーグル、5位がモルガン・ス
タンレーと、1位から5位までを見事に、すべて外資系企業が埋めています。日本企業で15位ま
でにランキング入りしているのは、三菱商事(8位)、野村総合研究所(10位)、そして野村證
券(15位)の3社のみ。
つまり、東大法→中央官庁というコースが、皆が競って選ぶコースではなくなってきているの
です。
※この項、次回に続きます。
福力