2019年03月23日
最近読んだ2つの小説。どちらも今まで読んだことのない作者の作品でしたが、どちら
にも貧困に悩む若者の姿がありました。
『ひと』の主人公「柏木聖輔」は、法政大学に通う大学生。車の事故で父を亡くし、母が
懸命に働いて彼を大学に通わせていました。しかし、その母もある日突然、自宅で亡くな
ってしまいます。これからどうしたら・・・・。茫然自失で商店街を歩いていた彼は、揚
げ物の臭いに誘われて、50円のコロッケを買おうとします。ところが、その寸前で、横か
ら来たおばあちゃんに先に残り1個だったコロッケを買われてしまうのです。そこから彼
の運命が変わり始めます。
『むこう岸』の佐野樹希は、生活保護に支えられて懸命に生きる中学生の女の子。小学5
年生の時に、父はお酒を飲んだあげく、交通事故で亡くなります。さらに母親はパニック
障害をかかえて仕事に就けない状態。中学生の身で、将来の生き方を懸命に考えます。そ
んな彼女が、有名進学校を落ちこぼれた山之内和真と出会って、こちらも運命が変わり始
めます。
2つの小説で描かれた相対的貧困。今、経済格差の広がる日本で、貧困にあえぐ子どもた
ちの数は急増していると聞きます。この2つの小説は、そのリアルな姿を描いているので
すが、それだけではなく、そこに見いだされるかすかな希望もあるのが救いでした。
福力