2018年10月2日
京都大学の本庶佑特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞。久しぶりに手放しで喜
べるニュースです。これで日本人の医学生理学賞は5人目になります。自分が特に
努力したわけでもないのに、やはり誇らしいものですね。
今日の朝日新聞(2018.10.2朝刊)によると、この研究のキーポイントになっている
PD-1というT細胞は、当初、アポトーシスの研究をしている過程で見つかったとい
うことです。ということは、最初はこのT細胞が、細胞死を引き起こすと思われてい
たのでしょうか。PD-1のPはProgrammed(プログラムされた)、DはDeath(死)
の頭文字だそうです。しかし、名前に反して「何度実験しても、細胞は死ななかった」
(同上記事)。
実は、このT細胞は、細胞死を引き起こす免疫細胞ではなく、むしろその逆に免疫機
能を抑制する働きに関わるものだったというわけです。
従来のがん研究では、この本来、人間が持っている免疫機能を活性化させることが
長らく追求されてきました。有名な「丸山ワクチン」もその1つ。
しかし、「体を守る免疫を強めてがんを倒すのではなく、がんが身を守る仕組みを突き
止め、これを逆手に取って治療につなげる戦略を実現」(2018.10.2日本経済新聞)し
たのが、今回の研究だということです。
免疫機能は人間にとって大切な機能ではあるけど、際限なく働きつづけると、やがて自
分にとって必要な細胞まで攻撃してしまうから、そこにはちゃんとブレーキが働くシス
テムが、本来備えてあります。がん細胞が、その機能を利用して自らの身を守ろうとし
ている「しくみ」を解明したのが、今回の研究の肝ということになるでしょうか。
しかし「がん細胞」ももう少し賢かったら、そのブレーキを悪用して、自らの増殖が暴
走すれば、やがて寄生している本体が崩壊してしまうとわかるはずなのに、と素人の私
は考えてしまいます。
ともかく本来はプラスに作用するはずの機能が、時には必ずしもプラスどころかマイナ
スに作用してしまうというところが、生命現象の興味深いところです。生命現象とは、
本当に複雑で神秘的なものだなぁと、改めて考えさせられました。
福力