校長ブログ

2018年07月25日

『彼方の友へ』

 

 

連日の猛暑。皆さん、いかがお過ごしでしょうか?体調をくずさないように、今年は
エアコンの使用をためらわず、水分補給に十分にご留意いただきたいと思います。
さて、この暑い夏を過ごすための新刊の本をご紹介します。
素晴らしい本というのは、その表紙と目次だけで何か感動の予感がするものですが、
まさにこの本がそうでした。明るい懐古調のイラストと対称的に、この本の目次はとて
もシンプルで、第一章 昭和十二年 第二章 昭和十五年・・・・そして第五章(終章)
昭和二十年、というもの。
しかしそのシンプルさが、かえってその裏にあるものを予感させるに十分な効果をもっ
ていました。
この小説の主人公、佐倉波津子は、ふしぎな巡り合わせで、雑誌「乙女の友」の編集部に
職を得ます。ただ、波津子には学がありません。貧しくて学校に通うことが出来なかった
のです。コンプレックスに悩む波津子。どんな時代にも、今と共通する悩みがあったのだ
なあと感じさせられます。しかしその編集部で、さまざまな人と出会い、波津子は編集者
として、人間として大きく成長していくのです。主人公の目を通して描かれるその物語の
展開は、ページを繰る指を止めさせません。
ただ一冊の雑誌をつくるのに、これほど多くの人の情熱が込められているのか、と思わせ
られるこの小説は、現代で次々に生まれては消えていく雑誌へのオマージュにも思えまし
た。おすすめです。
福力