2018年03月8日
前回、阿部氏が挙げた3つの弊害について、『史上最悪の英語政策』からその中身を
探ってみます。
「1 受験生は無駄な出費を強いられ、格差も生まれます。」
まず当然ながら、これらの外部試験は受験料がかかります。例えばTOEICで5,725円、
TOEFL iBTは235米ドル(日本円に換算すると約25,000円)。さらに試験は高度にパ
ターン化されているため、受験回数が多いほど点数が上がると言われています。
つまり、この試験を受けやすい生徒(試験会場が比較的近くにあり、経済的に余裕の
ある家庭)ほど有利になり、そうでない生徒との格差が生じるというわけです。
さらに著者は、TOEICを例に挙げて、その本質的な問題点を指摘しています。
この試験を運営しているのは、米国にあるEducational Testing Service(ETS)という
組織ですが、米国のサイトを見ると、このテストのポリシーが以下のように記されて
いるというのです。
TOEICのテストを使えば、
企業は、より質の良い従業員をそろえられます。
求職者や従業員は、競争力を身につけられます。
大学は、国際的な職場環境に学生がよりうまく対応できるように教育できます。
(『史上最悪の英語政策』62ページ)
つまり、このテストは雇用者側あるいは経営者側から見た観点でつくられたテストで、
その内容が、学習指導要領に沿っていないことはもちろん、そもそも大学受験に適して
いるとは言えないというわけです。私も以前、このテストを受験したことがあるのです
が、ビジネスに関連する問題が多いな、という印象を持ちました。
さらに上でも指摘したように、問題がパターン化されているため、対策をすれば短期間
にスコアを上げることが可能ということを、対策本(『はじめての新TOEICテスト全パ
ート総合対策』)を例に挙げて具体的に示しています。
なぜこれほど問題点を指摘される外部試験が、センター試験の代わりに採用されること
が検討されているのでしょうか。それを探るには、そもそもこの政策がどこから提言さ
れ始まったのかを見る必要があります。
福力