校長ブログ

2018年03月16日

英語4技能をめぐる迷走④

偶然ですが、この「4技能をめぐる迷走」についての議論を紹介していた矢先、また
10日(土)にも、東京大学入試担当の福田裕穂副学長が、英語の外部試験については
合否判定に「使わない可能性が極めて高い」との発言がありました。これに続いて、
東京外国語大学の林佳世子副学長も、「東大の意見は私たちもかねて指摘してきたこと。
目的の異なる試験を比較し、入試に使うのは問題がある」(朝日新聞 3月15日朝刊)
とコメントしています。ことさらに権威を重視するわけではないのですが、東大、東京
外大といった大学がこのような公式発表をすれば、間違いなく他の大学に大きな影響を
与えるでしょう。この朝日新聞記事のリード文も、「大学入試改革の根幹を揺るがしか
ねない事態」となっています。

 

さて、前回、このように4技能を測定する外部の民間試験をめぐる迷走は、どこから始ま
ったのかと疑問を提起しました。
識者によってその「発端」と指摘されることが多いのは、1986年の臨時教育審議会の「教
育改革に関する第二次答申」です。この答申では、従来の英語学習を「長期間の学習にもか
かわらず極めて非効率であり、改善する必要がある」と厳しく断罪しています。
そしてこの答申以降、文法・読解中心の英語学習は、コミュニケーション重視の授業へと大
きく転換されていきました。さらにこの後も、中央教育審議会、日経連、経団連などから次
々と英語教育に関する提言、答申が行われ、英語教育に関しては、外部の民間試験を活用し
ようという流れになっていきました。
しかし驚くべきことに、これまでの答申や提言の主体となっているメンバーには、英語の専
門家は存在しないのです。では主なメンバーは誰かというと、政界、経済界の重鎮たちです。
彼らが英語4技能を測定する民間試験導入を積極的に進めてきたのです。
先に挙げた『史上最悪の英語政策』(阿部公彦著)には、これら重鎮を名指しで批判する箇
所がたくさんあります。今までそれらの批判は、あまりマスコミに取りあげてこられなかっ
たのですが、ここにきてそれらが噴出してきている感があります。まだ迷走は始まったばか
りかも知れません。
福力