2021年10月25日
読書の秋、最後に紹介するのは上の2冊です。
まずはブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』。
このブログ欄でブレイディみかこさんの『子どもたちの階級闘争』を紹介したのが、
2018年4月。そのころは、彼女はまだ知る人ぞ知るという感じだったのですが、前作
同タイトルの1がベストセラーになり、彼女もすっかり有名人になりました。
今作2も息子をとりまくリポートですが、これまでの作品と同様に、市井の人々の目
線から見た英国の現状が垣間見れて興味深いです。中でも私が個人的に興味深かった
部分をとりあげると、
・英国の音楽のテストで「ビートルズの全メンバーの名前を挙げよ」と「このうち、
曲作りのコアとなっていた2人のメンバーは誰か」という問題が出されたらしい。
しかもこの問題で息子さんがジョン・レノンの名前を間違ってしまい、みかこさん
は「自分の12年間の養育法はすべて間違っていたのか」とさえ思ったとか。英国で
すら、ビートルズはすでに歴史上のグループなんだなと思った次第です。みかこさ
ん曰く、「英国の子どもはジョン・レノンの名前を間違える世代になっているとい
うことなんだろう」(p49~p50)
・LGBTQの教育に力を入れている息子さんの学校では、ノンバイナリーの教員が2人
いるという。彼らは「自分が担当する子どもたちには、自分は男性でも女性でもない
ということや、生徒たちにどう呼ばれたいたいかということを最初の授業で説明する」
という。彼らはheやsheという代名詞では呼ばれたくないらしく、theyを使うらしい。
これに対してみかこさんの配偶者は、それは複数形だからおかしいと指摘する。それ
にしても、英国でのLGBTQの意識の高さに改めて驚いた。米国では、すでにheでもな
くsheでもなく、zeやveという代名詞があるらしい。(p52~p53)
2冊目の「あの絵のまえで」は、6つの絵画をめぐる短編集。長編とはまた違った原田マハ
さんの魅力に浸れます。6つの作品すべて、短い話の中に「じーん」とくる感動があって、
あらためて原田マハさんのストーリーテリング力に感心させられました。秋の夜長におすす
めの1冊です。
福力