2017年12月16日
新聞の1面で数学の証明問題が取り扱われることはめったにないのですが、今日の
朝日新聞はその「めったにないこと」が起こりました。
記事の主旨は、京大の望月教授が数学の超難問「ABC予想」を証明したとする論文
が、国際的な数学の専門誌に掲載されることになった(=その証明が正しいことが
国際的に認められた)、ということでした。
実はこの証明、日本経済新聞では、なんと5年前の2012年9月18日に、すでに報道さ
れていました。その記事のタイトルは、「数学の難問「ABC予想」、京大教授が解明
か」。
つまり望月教授が論文をインターネット上で公開されてから、それが正しいかどうか
を判定するまでに、世界中の数学者が寄ってかかっても、5年という月日が必要だった
ということなのでしょう。なんという論文、なんという独創性でしょうか。
今年4月の朝日新聞に、彼の簡単な略歴と論文が紹介されていましたので、以下にそれ
らをまとめてみました。
「19歳で名門・米プリンストン大学を卒業。32歳で京都大学数理研究所教授に就任。
整数論と幾何学を融合した「宇宙際タイヒミュラー理論」を10年近くかけて1人で作り
あげる。ABC予想を証明した論文は4編600ページから成るもので、数学の大学教授です
ら、「理解する壁が高すぎる」と言わしめた。望月教授は2014年、自分自身による論文
の検証は終わったので、理解者を育成するとHP上で宣言している。」
(※朝日新聞2017.4.10の記事を再構成)
この4月の朝日新聞の記事を改めて読んでみると、京都大学の数理解析研究所(RIMS)
が、これまで多くの優れた数学者を生んできた背景もわかりました。RIMSに在籍する
教授は、大学の学部と違い、学生への授業の義務もなく、ひたすら数学の研究に没頭
できる環境が整えられているようです。
望月教授は、各メディアからの取材を丁重にお断りされているとのこと。4月にも取材を
試みた朝日新聞には、長文の丁寧な断りのメールがきたらしい。その断りの理由は、
「私の研究の正確な発信には、深い知識や理解が必要です。」とのこと。
数学という学問の奥の深さを思い知った記事でした。
福力